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(2)食物アレルギーの検査方法について
食物除去療法で何が食べられないかを決める時に、血液検査(IgE RAST)が参考になります。 しかし、その結果をそのまま信じてはいけません。
例えば、生後8カ月の乳児が血液検査で卵白陽性であっても、卵の完全除去(卵製品全てを食べない)治療をしなくても、多くのアトピー性皮膚炎の乳児は良くなります。
その際、血液検査以外に、食事日誌や皮膚テストも参考になりますが、食物アレルギーの診断は、除去テスト(その食物を試験的に食べないこと)で症状が良くなり、誘発テスト(その食物を試験的に食べてみること)で症状が悪化することで確かめます。
ただし、誘発テストは家庭で勝手にするのは危険な事がありますので、アレルギー医に相談してください。
食物アレルギーの検査方法
- 血液検査が参考になりますが、その結果をそのまま信じてはいけません。
- 食事日誌を参考にすることがあります。
- 除去テストや誘発テストで確認します。
- 自宅で無計画にするのは、危険なことがありますので、医師と相談の上、行ってください。
(4)食物アレルギー治療の原則(一般的に)
食物アレルギーに限らず、いわゆるアレルギーの原因を考慮した治療には、相反する2つの方法があります。
1つは、抗原除去(アレルゲン回避)で、もう1つは耐性獲得です。
抗原除去(アレルゲン回避)とは、文字通り原因の食べ物を食べないようにする方法です。 食べることが危険な激しいソバアレルギーでは必要ですし、2~3歳頃に治まることが多い3大アレルゲン(卵、牛乳、大豆)などでは、治まるまで行われることがしばしばあります。
耐性獲得とはアレルギーに耐える体質をつくることです。 具体的には、うるし職人はうるしをなめることで、うるしに慣らしていくそうですし、菊にかぶれる花屋さんが菊の葉を食べることで慣らしていく治療法がありまります(経口減感作療法)。
この相反する二つの治療法のどちらを選ぶかは、確実な指針は無く、ケース・バイ・ケースですし、また、そのアレルギー医の治療方針によっても異なります。(続く)
(5)食物アレルギー治療の原則(私的に)
例えば1歳2カ月の軽いアトピー性皮膚炎のお子さんが、血液検査をしてみると、卵白陽性がわかったとします。
それまで卵製品は食べていたのですが、湿疹は軽いけれども改善しないので、一度卵製品の完全除去治療を始めました。
2カ月やってみましたが、やはり湿疹は改善しないので、除去治療をやめて卵製品であるプリンを食べた所、ひどいじんましんが出ました。
これは何が起こったのかと言うと、このお子さんは卵アレルギーの体質はあったが、食べることで、耐性を獲得していた(食べることで慣らしていた)ということです。 ところが卵を食べなくなったことで、耐性がなくなって、本来持っていた卵アレルギーの体質が出てきたのだと考えられます。
つまり、食物アレルギーは除去治療をすることで、かえってひどくしている場合もあるのです。
このあたりからは、医者によって治療方針は異なりますし、患者さんによってもケース・バイ・ケースでしょうから、どれが正しいとは一概に言えません。
私は、食べると症状が出て、支障がある場合には除去治療が必要だが、血液検査で陽性だからと言ってむやみにするのは、かえってアレルギーを強めることがあるということを覚えておくべきだと思います。
だから食物アレルギーの体質があっても、症状に直接結びつかない場合は、そのまま食べ続ける方がいい場合が多いように思います。
(6)アレルギーマーチの功罪
アレルギーマーチという考え方があります。
一般に乳幼児ではアトピー性皮膚炎が多く、少し遅れて気管支喘息のお子さんが出てきて、アレルギー性鼻炎はもう少し遅れて出やすいのです。このようにアレルギー症状が1人のお子さんで進行していくことを、アレルギーマーチと言います。
そこで、アレルギー治療をちゃんとしないとアレルギーマーチが進行するので、早期から厳重な食物制限や吸入抗原対策が必要であるとする考え方があります。
ところが、厳重な対策をしなくても、アレルギーマーチが進行しないお子さんもいますし、逆にアレルギー体質が強いお子さんは、厳重な食物制限やダニ対策をしても、アレルギー症状が進行する事もしばしばです。それに、先に述べた『耐性獲得の考え方』が一方であるので、アレルギーの進行を予防するために、どこまで厳格な制限が必要かは疑問が残ります。
アレルギーはひとりひとり違いますし、このあたりの方針ははっきりどれが正しいかは一概に言えませんが、私の立場は、抗原除去(アレルゲン回避)はできれば厳重になり過ぎないようにして、耐性獲得(慣らしていく事)の方向をすすめたいと思っています。